旅行に行ってきます。

明日から遅めの夏休みで旅行に行ってきます。
行き先は今回も、北欧3都市。
戻ったら、少しずつ旅メモを紹介しますので
お楽しみに。
プレゼント企画も考えちゃいます。
溜まった、読書メモと最近の手仕事も。
あーぁ、無理かも(笑)
ともかく、面白いこといっぱい見て、聞いて
体験してきたいです。待っててね
(待ってないか、笑)

「ペギー・スー 鄯魔法の瞳をもつ少女」

「ペギー・スー 鄯魔法の瞳をもつ少女」セルジュ・ブリュソロ 金子ゆき子=訳 角川文庫552
印象な表紙絵(町田尚子さん)でずっと気になっていた作品、今回文庫化。
人類でただ一人悪いお化けが見え、その力ゆえに嫌われ、お化けたちの悪戯で厄介な立場に立たされるペギー・スー。一家が引っ越した町で“見えざる者”たちの悪巧みが始る。突如現れた人を天才にする青い太陽の光、人間の欲が起こす争い。やがて青い犬に率いられる知能を上げ、テレパシーを使いこなす動物たちによる支配。ペギー・スーが自分を見守る妖精アゼナを心の支えに初めての友だちダットリー、ソニアらと事態に立ち向かう。滑稽でさえある出来事には皮肉な視線が感じられ、絶望すれすれの忍耐、怒りゆえの勇気、そして唯一の能力ゆえの孤独、淡い恋心も友情も踏みにじられる運命、子供向けとは思えない過酷なまでのストーリー展開、フランス恐るべし。
(著者はフランスのスティーヴン・キングと称される大御所で、本書は初めてのファンタジーだそう。)
ペギー・スー(1) 魔法の瞳をもつ少女 (角川文庫)
ところでこのお話帰省中に読んで姪っ子にあげたんだけど、こどもに本をあげることがいいことなのか、悪いことなのか、未だ私にはわからない。確かに読書には内面の世界を育て、教養知性を高める場合もあるかもしれない。でも多くの場合読書は単なる娯楽。私なんかファンタジーをうまく卒業できず、未だに現実よりも誰かの想像世界に捉われ、無用な所有欲に踊らされているんだから。

「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸

「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸 講談社1470
極度の飛行機恐怖症の恩田さんが、初めて憧れの地、イギリスのストーンヘンジアイスランドの古代遺跡に取材旅行してビールを飲むお話。極度の恐怖に溢れ出す妄想が、理路整然とした評論なんかよりも百倍面白い恩田ワールドへのガイドだ。理瀬シリーズのための取材だたらしいが、旅でもっとも印象に残ったのはイングランドの丘だそうで、丘を前に繰り広げられる空想は恩田さんの創作の源に触れる思い。まさしくなるべくして作家さんになったヒトなんだなぁ。今後の作品にどう転換されていくのか、期待大。

「幸福な食卓」瀬尾まいこ

幸福な食卓瀬尾まいこ 講談社1470
参ったな、私は本を読んで泣くことが殆どないんで、“泣ける”小説ってのは信用しないんだけど、ホントに沁みる本。父親の自殺未遂をきっかけにそれぞれが病んだ心を抱える家族。梅雨には体調を崩すわたし(佐和子)、父さんをやめる宣言をした父さん、家を出て一人暮らす母さん、真剣に生きることをやめた兄、直ちゃんとようやく本気で好きになった変な女。それでも、いっしょの食卓を囲む大沢一家。奇妙な均衡を保った家族の中で、佐和子を支えているのは恋人の大浦君。そして、ささやかな佐和子の平和が壊れた時、家族は。
瀬尾さんにしてこの展開かぁ、と思ったけど、立ち直った佐和子が大浦君のお母さんに会いにいくシーンが本当にいい。この結末のために必然のストーリーだったのだと納得。
「私は大切なものをなくしてしまったけど、完全に全てを失ったわけじゃない。私の周りにはまだ大切なものがいくつかあって、ちゃんとつながっていくものがある。」

「小学生日記」hanae*

小学生日記」hanae* 角川文庫460本 
すごい。 hanae*さんは北欧雑貨特集がきっかけで知った雑誌「spoon.」のモデルさん。同誌のwebで掲載された作品をまとめたもの。
アメリカ生まれの帰国子女のHanae*が日本の小学生としての日々を綴った文。多分どんな子だって抱く気持ちに違いないけど、どこか自分さえも客観的に見つめる視線と、微妙な感情をストレート表現する力が抜群。賞をとった、アメリカに住み時々日本に戻る兄モトイの作文は特にいい。帰国子女という立場、モデルという仕事(+作家さん)、「うちはうち」と育てられ、自分を見つめ表現する力を持った彼女、どうかのびのびと心のままに育って。人とは違うということをあたりまえで、幸運と思える幸せを忘れないで欲しいなぁ。

「天の前庭」ほしおさなえ

「天の前庭」ほしおさなえ 東京創元社 ミステリ・フロンティア1785
うーん、すっきりしない話は得意じゃない。
父を無くした交通事故の後の長い昏睡状態から目覚めた柚乃は記憶を失っていた。幼い日ドッペルゲンガーを見たといって失踪した母。自分が書いたはずの日記には事実と異なって自分にそっくりな少女が描かれている。高校の工事現場から見つかった白骨死体と日付の入ったペン。世間を騒がす宗教団体と父母との関連を示唆する出来事、それぞれに事情を抱えるかつての親友達。柚乃が記憶を取り戻すには、そして明らかになる真実とは。

どうも著者とは相性が悪い。主体が切り替わる記述方式、タイムスリップをネタにしたこみいって、結局あいまいな結論も、ありがちな設定なのにどこまでいってもどの登場人物も捕らえどころなくて物語に溶け込めない。例えば似たような仕掛けの「HeartBeat」(小路幸也)はアラはあってもばっちり同調できるのに。前作ヘビイチゴサナトリウムのどこか冷たい読後感が後を引いているのかも。著者はもともと詩人さんで小説は2作目。

「春を嫌いになった理由(わけ)」誉田哲也

「春を嫌いになった理由(わけ)」誉田哲也 幻冬舎1600本
第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞後の第一作。無職の秋川瑞希は、TV局のプロデューサーの叔母名倉織江から番組に出演する霊能者、マリア・エステーラの通訳を仰せつかる。霊能者による未解決事件を探る番組でみつかった死体。瑞希らの物語と並行して語られる、密入国不法滞在者の中国人兄妹の物語。子供時代のトラウマで超能力や霊といった‘超常現象’を毛嫌いする瑞希の前で起こる、不可思議な出来事と強引なテレビ業界の人たちの思惑が交錯し、心霊といってもむしろ笑いを誘う語り口。自己否定を繰り返し自分に自信を持たない瑞希が否応なく自分の能力に気付かされ、現実に直面させられるあたり笑えて思わず‘しっかりしろ’と突っ込みたくもなる。今後の展開もありそう。