「天の前庭」ほしおさなえ

「天の前庭」ほしおさなえ 東京創元社 ミステリ・フロンティア1785
うーん、すっきりしない話は得意じゃない。
父を無くした交通事故の後の長い昏睡状態から目覚めた柚乃は記憶を失っていた。幼い日ドッペルゲンガーを見たといって失踪した母。自分が書いたはずの日記には事実と異なって自分にそっくりな少女が描かれている。高校の工事現場から見つかった白骨死体と日付の入ったペン。世間を騒がす宗教団体と父母との関連を示唆する出来事、それぞれに事情を抱えるかつての親友達。柚乃が記憶を取り戻すには、そして明らかになる真実とは。

どうも著者とは相性が悪い。主体が切り替わる記述方式、タイムスリップをネタにしたこみいって、結局あいまいな結論も、ありがちな設定なのにどこまでいってもどの登場人物も捕らえどころなくて物語に溶け込めない。例えば似たような仕掛けの「HeartBeat」(小路幸也)はアラはあってもばっちり同調できるのに。前作ヘビイチゴサナトリウムのどこか冷たい読後感が後を引いているのかも。著者はもともと詩人さんで小説は2作目。