「幸福な食卓」瀬尾まいこ

幸福な食卓瀬尾まいこ 講談社1470
参ったな、私は本を読んで泣くことが殆どないんで、“泣ける”小説ってのは信用しないんだけど、ホントに沁みる本。父親の自殺未遂をきっかけにそれぞれが病んだ心を抱える家族。梅雨には体調を崩すわたし(佐和子)、父さんをやめる宣言をした父さん、家を出て一人暮らす母さん、真剣に生きることをやめた兄、直ちゃんとようやく本気で好きになった変な女。それでも、いっしょの食卓を囲む大沢一家。奇妙な均衡を保った家族の中で、佐和子を支えているのは恋人の大浦君。そして、ささやかな佐和子の平和が壊れた時、家族は。
瀬尾さんにしてこの展開かぁ、と思ったけど、立ち直った佐和子が大浦君のお母さんに会いにいくシーンが本当にいい。この結末のために必然のストーリーだったのだと納得。
「私は大切なものをなくしてしまったけど、完全に全てを失ったわけじゃない。私の周りにはまだ大切なものがいくつかあって、ちゃんとつながっていくものがある。」