「春を嫌いになった理由(わけ)」誉田哲也

「春を嫌いになった理由(わけ)」誉田哲也 幻冬舎1600本
第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞後の第一作。無職の秋川瑞希は、TV局のプロデューサーの叔母名倉織江から番組に出演する霊能者、マリア・エステーラの通訳を仰せつかる。霊能者による未解決事件を探る番組でみつかった死体。瑞希らの物語と並行して語られる、密入国不法滞在者の中国人兄妹の物語。子供時代のトラウマで超能力や霊といった‘超常現象’を毛嫌いする瑞希の前で起こる、不可思議な出来事と強引なテレビ業界の人たちの思惑が交錯し、心霊といってもむしろ笑いを誘う語り口。自己否定を繰り返し自分に自信を持たない瑞希が否応なく自分の能力に気付かされ、現実に直面させられるあたり笑えて思わず‘しっかりしろ’と突っ込みたくもなる。今後の展開もありそう。