<10月中旬の読書>

ロズウェルなんか知らない」篠田節子 講談社1700本
寂れた何もない村「駒木野」の青年団による村おこしのドタバタを真面目に描いた奮闘記。荻原さんの「メリーゴーランド」を読んだばかりで、題材自体に新鮮味は無いけれど、破れかぶれの“四次元化計画”という奇策を打ち出すアイデア、そして次から次へと繰り出す技を主要登場人物の立場から多面的に破綻無くまとめるところが篠田さん。彼女は「狂気」(精神的破綻の意ではなく、物に憑かれ、のめりこみ没頭していくって意味合いの)を描かせると本当に恐ろしいほどに上手いのだけど、力技でなく、計算し尽くして且つ自然に収めてるという印象。この物語ではその辺うまくコントロールされてて、上げたり落としたりで最後に陽の狂気に突入、ってところで前向きに締めているのもいい。さすがです。

「どこかに神様がいると思っていた」新野哲也 新潮社1400本
燃え尽きた商社マン、証券マン、画家や半ヤクザもん、世捨て人、永久追放の柔道家に流れ者の港の運び屋など、人生の敗北者のような男達と彼らがつかんだ希望のようなものを情を排除して淡々と描いた短編集。おセンチなストーリーにも関わらず、見事に感傷も同情も共感も全く無い、事実だけを記述する作風が結構心地よい。