<9月旅の後の読書>

アキハバラ@DEEP石田衣良 文芸春秋1700
あるHPをきっかけに集まった3+3人で出来上がった会社アキハバラ@DEEP。オタクで半引きこもり、社会に適応できてない仲間が集まってできあがったAI型検索エンジンのβ版。これに目をつけたIT業界の王者に実力行使されソフトを盗まれてしまう。そして戦うために立ち上がる6人。意識をもったコンピュータソフトやAIの話はまあ良くある話で、具体的な方法論は当然描かれないので、物語の完成度としてはイマイチだけど、若者の“熱”を書かせるとさすが石田さん。個人的には説教調、世間の良き指標としてよりは、熱い物語を書いて欲しい。

「犬はどこだ」米澤穂信 東京創元社 ミステリ・フロンティア1680
不本意なUターン、引きこもりからようやく復活し、犬探しの事務所を開業した25歳紺屋。がいきなり持ち込まれたのは人(プログラマー佐久良桐子(とうこ)探し。探偵にあこがれる後輩、ハンペ−(半田平吉)が地元の古文書由来調査に協力。二つの調査が関連しつつ物語が進行、桐子の失踪の影にストーカーがいて、彼女の足跡を辿ると最後には思いがけずハードな結末。(ハンペー君はほとんど狂言回しの道化的存在)米澤さんの物語は一見突き放して、実は突き放しきれない情というか、未来への期待のようなものがいいのだけど、このお話にも同じ持ち味が活きてる。ブラックな結末にも後味のまずさはなく、主人公のやや後ろ向き加減がかもし出す印象が新鮮。今後に期待(たぶんシリーズ化されるのでは)

「四十日と四十夜のメルヘン」青木淳 新潮社1575
新聞書評で高橋源一郎が絶賛しててリクエストしてみたけど、実に不可解で、私にはちょっと理解不能。チラシ配りを正業とする女と彼女の描こうとする物語、師の描いた修道院を舞台とする物語が繰り返され、混合し、変容し、唐突に終わる。幻想的といえば幻想的だけど、どうも私は前衛的な作品とは相性悪し。