<9月旅行前の読書>

「反自殺クラブ IWGP5」石田衣良 文芸春秋1600 
IWGP1で街、若者、悪意を描写する圧倒的な筆力にうなってから、何年になるだろうか。
本作では、スカウトマン、学生サークル出身者の悪行、伝説のロックスターの詐欺、中国の劣悪労働環境、流行のお人形、自殺サイトと心療内科といったどこかで聞いたことのある今時のニュースをテーマに。どうも石田さんは直木賞受賞以降ストリーテラーとして溢れ出る物語を書くより、若者を導くメッセンジ的要素の話が多くなってきた。

「はなうた日和」山本幸久
 集英社1575
世田谷線沿線に住む人たちを主人公にした連作。この主人公達がちょっとぼやっと、というか時代からは少し遅れ気味みたいな、嫌味じゃない程度に気の抜けたところのある人ばっかりで、ちょっとほろっときて、自然と和むようなお話。自分自身を世の中に対してどう位置付けてるかによって好みが分かれるかもしれない。私は分けたら多分こっち側(笑)

「メリーゴーランド」荻原浩
 新潮社1700本
都会からUターンして地方公務員になった遠野啓一。異動先は赤字テーマパーク駒谷アテネ村のリニューアル推進室。経営感覚ゼロのお偉いさん、公務員ならではの理不尽が横行する中で、昔の劇団仲間、ヤンキーくずれの建築会社の若い衆達、プライドの高いデザイン会社の担当らと奮闘する。ダメダメな地方行政、ひいては日本に希望はあるのか、遠野家の平和と未来は?単純なハッピーエンドにしないあたり好感が持てる。コミカルなだけに選挙真っ最中の今、きつい皮肉でもある。