7月中旬 倉知淳、群ようこ、中島たい子

「ほうかご探偵隊」倉知淳 講談社ミステリランド2100
小学校高学年辺りをターゲットにしたこのシリーズがとても気に入っている。バラエティに富んで、作家さんれぞれの作風や創作の源がちょっぴり覗ける。その中でやっぱり多いのが、同級生グループが謎を追う設定だけど、本作は一番穏当な謎と、穏当なひねりと穏当な解決。シリーズを順に読んでいくと、この作風って必要なバランスなのが判ります。
クラスの連続不要品紛失の謎を好奇心の塊龍之介くんと僕(高時)達が追う。龍之介くんは、著者の他シリーズの探偵役、猫丸先輩の甥っ子らしき設定。作家を漠然と夢見るぼくのキャラがちょっと弱いか。

「三味線ざんまい」群ようこ 角川書店1200本 
浅草で、小唄と三味線のお稽古を始めた群さん、譜面のない邦楽の世界で迷い、二十分の稽古で精根尽き果てる。それでもマイ・三味線を手に入れ、調子合わせに奮闘し、人前での小唄の披露から名取になるまでの日々。三味線のあれこれは私には全く不明だが、とにかく群さんが夢中なのはよくわかる。これでお仕事できてるのか?と心配になるほど。大人になっても「自分はできない」ということが判ったことが収穫だという。三味線を通じて日本文化にも開眼されたそうなので、群ワールドの拡大が楽しみ。表紙の石丸千里さんの絵がぴったり。「本の旅人」2001.08−2003.07掲載。

「漢方小説」中島たい子 集英社1200本
31歳、脚本家たまご、元彼の結婚報告以来調子を崩し、食べ物を受け付けず、ふるえの症状で病院通いするものの原因不明の川波みのりが頼ったのは若い漢方医、坂口先生。五行説で解かれる人の身体のありよう、バランスをとりもどす治療によって心身ともに回復していき、仕事や友人との関係も。漢方医の不思議に心落ち着かせる香りが、漂うような“癒し”の小説。こんな風に自分を取り戻すのもありかな。
でもこのバランスを自分で保つのは難しい。(あ、だから医者がいるんだ)第28回すばる文学賞受賞作。