「スペース」シリーズ(3部作) 加納朋子

「スペース」加納朋子 東京創元社 創元クライム・クラブ
前2作から10年を経て書かれたシリーズ3作目だが作中の時間は連続している。駒子が瀬尾さんに委ねる最後にして最大の謎。手紙に書かれたこと書かれなかったこと。「バックスペース」では語り手が代わって前表題作の駒子の友人、駒井まどかの目から、手紙の物語のもう一つの面が明らかに。寮の裏の建物にすむ住人(八重樫さん)と彼が励ましつづける友人ハヤミ、思いがけない旅先でのトラブルと再会。そして瀬尾さん自身のヒミツも明らかに。大切なことでも頑なな思い込みのフィルターで曇ってしまう。自分の場所を探す少女達の渾身の冒険、ようやくシリーズの最後にきて、優しい気持ちを抱ける。(ただしいい子ちゃんの駒子に対してではない。)設定は不要に複雑にしすぎかも。

ななつのこ」,「魔法飛行」加納朋子 創元推理文庫各520本、560本
3部作最終話「スペース」を読むために再読。女子短大生の入江駒子が愛読本「ななつのこ」の著者に日常の謎を手紙で語り、その謎解きが返答されるという形式の1作目。はやた少年と謎解き役の療養中のあやめさんの関係は、現実の駒子と謎解き役の作者佐伯綾乃(実は一つの事件で知り合う瀬尾青年)にリンクしている。2作目では自分の日常を文にしたいと志し、瀬尾さんに日常を綴りつづける駒子。二人の関係は少し進展して駒子は恋心を抱いているけど、瀬尾さんの真意がわからないといったところ。
発表すぐに読んだはずだけど、当時の印象は覚えてない。北村薫の女子大生シリーズは当時お気に入りだったから、同じ系列の本作も好意的に受け取ったんだろうな。今読み返してみると、自分は随分心が狭くなった。純真で、マイペース、一歩引いておっとりと他人を受け入れ、そのくせ周囲に必要とされる駒子が苛立たしくてならない。「私、いい子よ!」と目いっぱい主張している様に思われ引っかかってしまう。イジワル?
スペース (創元クライム・クラブ)