「雨にぬれても」上原隆

「雨にぬれても」上原隆 幻冬舎アウトロー文庫495本
「人生、下手に生きるのも悪くないー。」といううたい文句につられて買った本。幻冬舎のWebマガジンで連載された作品らしい。取材した話を著者の主観を排除し、そのまま記す形式のショートストーリーで、全体を通すと上原さんならではの姿勢がみえて、独自のスタイルに。一つ一つの話がドラマや小説以上にドラマチック。長年家族以上に時間をともにした社長に自殺された事務員、兄弟を精神の病でなくした男性、夜間学校で学ぶ老人、リクルートに奔走する女学生、概ね冴えないというかむしろ悲惨な人生を送る人々。でも、誰かに“語る”という行為はすでに何かを昇華した結果なのだと思う。それを静かに受け止め、脚色することなく伝えた物語には一種の覚悟があって、どこかの誰かの人生というだけ以上に、迫ってくる。あとがきの上原さんの言葉「いろんなことがあっても、人は生き続けているということ」、これが大切なんだよね。