「けい子ちゃんのゆかた」庄野潤三

「けい子ちゃんのゆかた」庄野潤三 新潮社1470
 
「貝がらと海の音」(新潮社)以来、生田の老夫婦の晩年をテーマにした連作の10作目。80歳を越え、二人目のひ孫が誕生し、近所のスーパー建設計画で庭先にやってくる小鳥たちの顔ぶれが変わり、大阪行きはグリーン車に変わる。孫達の成長など少しずつ変ること、そして変わらないこと、そんな暮らしを綴ったお話。対話で拝見した江國香織さん訪問の話も出てくるので愛読者には嬉しい。大きな変化も激情もない穏やかな作品だけど、世界のどこかにこういう生活があるってことは、私を安心させてくれる。
この連載のあと(連載を1年ごとにまとめるので、現実とちょうど1年ずれるらしい)親友の坂田寛夫氏が亡くなられた。今までも小沼丹氏や清水さんらの死を淡々と受け入れ、その後も折にふれ書いておられるけれど、やはり寂しく、心配。
表紙の河田ヒロさんは、連載中のカット、先の「うさぎのミミリー」文庫版の表紙も担当、庄野さんの作風にぴったり。
けい子ちゃんのゆかた