「HEARTBEAT」小路幸也

「HEARTBEAT」小路幸也 東京創元社ミステリ・フロンティア1575
 
小路幸也(しょうじゆきや)さんは昨年末、「そこへ届くのは僕たちの声」(新潮社)を図書館の新刊コーナーで見かけてビビっときた作家さん。まったく事前情報なしに巡り会う作家さんって運命じゃない?
前作も、未完成感があるけど(そこがまた好きな点でもある)熱い小説だったが、本作品も。留学先のニューヨークで経験した事件から地下生活を経て、高校時代の約束、ヤオとの再会のために帰国した原之井(委員長)。ところがヤオは行方不明で、唯一の友人巡谷(めぐりや)と行方を捜す。並行して起こる五条辻という名家に起こる幽霊騒動。動揺するユーリを助けようとするエミィとハンマ。主人公に過去の経験から備わった、人の鼓動を感じ取る力で絡まった二つの物語の謎が解けるのだけど、同時にもう一つの驚きの真実が。
その人のために何かをしたいという登場人物たちのシンプルな気持ちに満ちた作品。切ない結末の中で、最後1ページが実に優しく、救い。
SF仕立てのファンタジックな作風を許せる方に、絶対お薦め。