6月中旬の読書

「真夜中のマーチ」奥田英朗 集英社1500本
学生時代ヤクザなイベントで小金を儲け、そのまま半端なプロデュース会社をジリ貧で経営する健司(ヨコケン)、そのイベントの参加者、有名商社に勤め抜群の記憶力や頭の回転を持ちながらも過集中のために落ちこぼれているサラリーマン三田(ミタゾウ)、裕福な家でわがまま放題贅沢三昧で育ち女王きどりの女黒川千恵(クロチュエ)。ヤクザと大儲けをたくらむ千恵の父親、さらに台湾ヤクザらに一泡吹かせ、一発逆転を狙うでこぼこトリオ。海千山千のやくざ達を相手に、肝心なところのネジが抜けたような3人組が、知恵を絞って、勢いにのって、破れかぶれで起こす騒動。余りにバタバタと状況が変容するので、成り行きはよくわからなかったのだけど、三人のどうしょうもないキャラクターにそれなりに肩入れできればめちゃ楽しい。

「とっても不幸な幸運」畠中恵 双葉社1500本
渋谷駅ほど近く常連客たちばかり「酒場」。店長(洋介)と義理の娘のり子、バーテンダーの健也、常連の医者飯田、刑事の花立、マジシャンの天野、洋介の死んだ妻と義理の父(前オーナー)らをめぐる連作。「とっても不幸な幸運」と名前のついた空っぽの缶、が摩訶不思議、開けた人の心にわだかまる幻想を見せる。そして仲間達の謎解きがはじまる。強面のオーナーと気の置けない個性豊かな常連客、半地下の居心地のいい酒場とくれば連作ネタとしては、ありがちだけど十分なはず。形式に拘り過ぎて使った“幻想をみせる缶詰”というのがどうにもヤボで、全体にばらばら感あり。謎解きより人間をしっかり書いた方がよかったし、余計なものは取った方がもっとよかったと思う。著者は軽めの時代小説で人気だそう。今度はそっちを読んでみよう。