6月上旬の読書

でいりーと銘打った割に、やっぱり溜めてしまうJです。

「逃亡くそたわけ」絲山秋子 中央公論新社1300本
福岡の精神病院の開放病棟から逃走した躁状態のあたし(花)。連れは鬱から回復しつつあるなごやん(蓮田司)。自分の異常を自覚しながらも、薬で何かを抑えながら、何かから逃げるように、博多、国東、別府、阿蘇、宮崎、鹿児島と逃避行。これでもかと博多弁で喋りまくり、勢いが途切れる時降りかかってくるだろう現実から逃げ続ける花たち。ぶっ飛んだ精神状態のあちらがわから覗き見る世界はこんなにも混乱して、重苦しいものなんだろうか。この前読んだ「海の仙人」と全く違った印象で、別の作品も読んでみたい。

「生きる読書」群ようこ 角川Oneテーマ21 571本
2000年発行の新書、「本の旅人」に99年12月から2000年11月まで連載された記事がすごく面白い。群さんが毎月買った本のリストと、コメントが。本棚をすべて自分の読んだ本にするのが夢、というのはいつか群さんのエッセイで読んだ話で、私もすごく共感した記憶がある。しかーし、理想は遥かに遠いのだ。そんな苦難(笑)の読書生活を垣間見る。群さんは編みものや手仕事に対する造詣が深く最近では三味線や長唄への興味なんかもつきないらしく、購入した本もすごく興味深い。ときどき群さんの本エッセイは読み返してみるとハッとする。バイブルのようにではなく懐かしい友達に会うように時々読み返したい。

人のセックスを笑うな山崎ナオコーラ 河出書房新社1000本
19歳のオレ(磯貝くん)と20歳年上の美術学校の講師ユリ。夫(猪熊さん)を大切といいながらも、生活にはだらしなく、自由というよりなりゆきで生きているようなユリに恋をする主人公。ずっと年上のユリの身体や何もできないところもいとおしく思い焦がれるのに、突然別れが告げられる。アトリエで繰り返した二人の時間、恋に溺れ熱に浮かれた日々、そしてそれが熱ければ熱いほど、喪失もまた大きい。タイトルの印象とは違って、切ない恋の物語。いい男になって欲しいもんです磯貝くん。関係ないけど「純愛」ってもともとイカガワシイ言葉なのに、ブームってぇ(^_^;)

「愛情日誌」夏石鈴子 マガジンハウス1400本
「おでかけ」と表題作はのんきで優しいけどかなり頼りなく、ふらふらしている映画監督の夫昭彦と二人の子ども、そして共同経営の編集プロダクションで働くわたし、豊子。沢山の苛立ちを抱えつい損な役回りになってしまう豊子、それでも子どもを無条件にいとおしいと思う瞬間、夫との情熱はないけど馴染んだセックス、そんな日常のお話。なんの色気もなくセックスを語る割に、全体に占めるセックス話比率が高いのがおかしい。「しつけ」など大切に思うことがさりげなく描かれている所がいいなと思う。「催花雨」本屋さんでであった年配の男青木さん。田舎に帰る恋人と別れ一人の銀行員千晴。世の中には4種類の男がいるという。“どうにか寝たい男”“寝てもいい男”“ゼッタイ寝たくない男”あれ3つしか思い出せない・・・。表紙のちょっとキモカワイイお人形さんは南伸坊さんのお母さん、南タカコさんの作品だそう。