「夏休み」中村航

「夏休み」中村航(こう) 河出書房新社1300本

自宅で翻訳の仕事をする僕(守)と、妻のユキ、妻の母“ママ”。そして妻の友だち舞子とその夫、吉田くん。義理の友人との奇妙な連帯感。そして突然の吉田くんの家出から、転じて二人の男が妻たちを追いかける旅に。大人の夏休みの物語なのに、表紙のマンガっぽいイラスト(宮尾和孝さん、悪いわけではない。合わないだけ。)のために、誤解をまねく。妻達に引き回されるやや情けない二人だけど、二人の草津へのドライブ、車中での会話、夜中の温泉などのエピソードが心弾み後ろ髪を惹かれる夏休みの雰囲気たっぷり。そして守の仕事の時間(様々なマシーンの取り扱い説明書の作成)、その合間のママとの不思議な時間が心地よく、私のいるこことは違う小説時間を楽しめた。