「ソナタの夜」永井するみ

ソナタの夜」永井するみ 講談社1800本

最近の永井さんの作品は家庭と、女の生きがい(多くは仕事)と、恋というか男女関係というのがテーマになっている。特に短編小説でこのバランス(あるいはアンバランス)がすごくいいと思う。同じ年代の女の目からとても共感できる。色恋におぼれる、時間や場所や色々を割り切って体の関係に燃えるなんてのは、ちょっと私には理解不能。例えば日経新聞連載中の巨匠の作品みたいに、性愛だけで描かれる女なんて非現実的に過ぎる。実際女はもっと貪欲でずるいものじゃないかな。その点、家庭があっても他の男と一年に一度会ったり、仕事つながりの男達と関係を続けたり、過去の男への気持ちを引きずりながらも仕事も、新しい男との付き合いも欲する彼女たちは、ぐっと身近で、いろんな出来事の狭間でバランスを取り、時にどちらかに大きく振れてもがき、それでも必死な女達は、愚かでたくましく、愛らしくもある。
個人的には彼女の専門的な知識を生かしたミステリの傑作を待っているけど、ミステリに拘らずに女をとことん描く傑作の方が早いかなとも思う。