「この骨董が、アナタです。」仲畑貴志

「この骨董が、アナタです。」仲畑貴志 講談社2000本

「骨董」ネタが好き。といっても実際に骨董は何もわからない。ただ、「美」とか「芸術」とかいうあいまいなものやいろんな「欲」に翻弄され、創る人、求める人、商う人それぞれの業みたいなものが実に端的に現れる分野で、すごく面白いと思う(意地悪だけど)。広告業界を代表するコピーライター、仲畑氏が骨董病に冒された人間の側から、高揚と落胆、満足と失意を繰り返し、泣き笑いするばかばかしくもいじらしい日々を綴っている。渦中にありながら、自らをこうやって茶化して語れる辺り、只者ではないと思う。症状に軽重はあっても趣味とはこういうものなのかも知れないなぁ。そしてこういう熱中ぶり、偏愛ぶりこそにその人があらわれるとも。タイトルは氏に対して白洲正子さんの言った台詞から。