連休最後の読書

連休最後の一日(結局どこにも出かけず読書三昧の堕落した一日)

「少女伝」大野靖子 講談社2200本 
麻生で、どこか浮世離れした両親と美しい兄姉妹に囲まれ、母の愛はなくも周囲に大切にされ育った麻子。裕福で幸せな家族が音を立て、崩壊していく様、その中で幼いながらも自分の役どころを心得、運命を受け入れる麻子。そして戦争の終結により自我を倫理を喪失する将校らと対照的に、開放感に浸る。戦後は堕ちていくように流される一人の女に。脚本家の著者は麻布出身らしいので、自伝的要素を含んでいるのか、戦争が終わるあたりで物語は終わらせたほうがまとまったと思うがどうしても書き残しておきたいことだったのか。

「れんげ野原のまんなかで」森谷明子 東京創元社ミステリ・フロンティア1500本
地方都市の外れ、新設の秋葉図書館を舞台にしたミステリ連作。加納朋子北村薫の「私」シリーズと同じ系列の作風で新鮮味はないけど、何しろ図書館という場所は本読みには特別な場所。新米の司書文子と先輩司書たち、元地主の秋葉さん。まだまだ利用者の少ない図書館に起こる謎。閉館後の図書館に残ろうとする小学生達、絵本コーナー残された暗号、不正登録者、秋葉さんと雪女の昔話、そしてれんげ畑に隠されたものなど。図書館ならではの謎かけも楽しいが、そこは限界もあるのでだんだんと謎がヘビーになっていくのがご愛嬌。先輩司書の能勢さんに寄せる淡い恋心と、私にも嬉しい「クローディアの秘密」や「床下の小人」の本ネタなども絡めて図書館好きには嬉しい。ネタに拘りすぎず、この魅力的な場所を生かして、できればシリーズも続けて主人公を成長させて欲しい。
紫式部を探偵役にした王朝ミステリ「千年の黙 異本源氏物語」で第13回鮎川哲也賞を受賞したそう(2003)そっちを読んでみたい。

「桜小僧」ヒキタクニオ 集英社1700本
この人は誰に向け小説を書いているのだろう?ギャングまがいの暴力的なシーンや、インパクトの強いタイトルや装丁、エキセントリックな周辺人物など総合的な印象で読者を限定してる気がする。彼らは”生”そのもの、有り余る若さ、生きること自体に対する衝動みたいなものを持て余してる男の子達の心情がとてもリアル。共に童貞をすてることになる高校三年坊主3人雄太、義信、康世。それぞれに個性的な両親やいきなじいちゃん、そして佑太に好意を持つ女の子。短絡的な3人が困った状況に陥って最後は勢いと根性で何とかしようともがく、あんまり学習しないし、反省もしない、けれど実際3人はすごくまっとうな感覚を持っていて、そのまっすぐ加減が気持ちよい。佑太にホレちゃうヘン子ちゃんと同レベルでやきもきしてしまう・・・あぁヒキタさんの術中。