図書館の本、「ぐるりのこと」梨木香歩

私は読書の殆どを図書館に頼っているのだけど、ときどき当たるひどく汚れた本、傷んだ本には心が痛む。この本は、名前は知らないけどザラリとした手触りの真っ白な紙をカバーにつかったシンプルな装丁で、汚れがより目立って切ない。

「ぐるりのこと」梨木香歩(新潮社1300本体)

絵本や「裏庭」など児童ものから、工芸を志す学生たちの「からくりからかさ」、幻想的な「家守綺譚」まで作風を広げつつある著者がぐるり(身の回り)のことを考えたエッセイ。「考える人」に連載されただけあって、とにかく深く考える。なかでも、個と群れ(国、宗教、会社、家、民族etc)、境界については個人的なテーマでもあるらしく、イギリス留学中、トルコへの旅行、九州の田舎暮らしや小旅行、日々のニュースを通して個人のあり方を模索し、古来の日本的な境界のあいまいさ(良さ良い意味で)が非難される今の時代の希望を探している。

図書館の本、といえば表紙の汚れを防止して強度を補強するために、粘着シート掛けしてあります。おかげで、例えば、ビックリマンシールみたいな虹色に光る加工の「空中ブランコ」(奥田英朗)とか、カバー下にヒミツのある「秘密」(東野圭吾)とか、児童ものによくある内扉の地図のイラストなんかは見ることが出来なくなる。それは買った人の楽しみってことかな。
私が欲しいなぁ、と思っているムーミンコミックもクリーム色のカバーの下、本体の装丁がえらく素敵。あぁこれを並べて、ニヤニヤした〜い!