「俯いていたつもりはない」永井するみ

「俯いていたつもりはない」永井するみ 光文社1900本

永井さんは専門性を備えたミステリーに女性の視線と一気に読ませる熱というか力を備えていて、96年の「枯れ蔵」以来ずっとブレイクを待っている作家さん。
シングルマザーの母志乃に育てられ、子供を自由に遊ばせることを第一にしたプレスクール「ラウンドテイル」を運営する丸尾緋沙子。情熱的で華やいだ生徒の母親高柳凛子(その夫は緋沙子が留学先で不倫をしていた男)が失踪。恋愛沙汰と思われていたが、男とも仕事とも縁のない地で死体が見つかる。彼女の本当の顔は、そして犯人は?過去の男への情愛、子供達と心安らぐ場ラウンドテイルへの思いに揺れる緋沙子、そして彼女を父親のいない子として育ててしまった志乃の思い。
が、ワタシ的には不満が。著者は、二人の受身の女性と失踪した情熱的でパワフルな女性を、子供への愛情、恋愛、仕事への情熱などを軸に描いて十分読ませられる人なのに。著者は緋沙子の心情を構成する最も重要であるはずのパーツを最後に取り出す。ミステリにとらわれるあまり、策を弄し逆にオチが最初から読めてしまう。結局読者をだまし、作品にキズをつけてしまった。悲しい。また次の作品に期待ということで。残念。